仕事をしている上で、一定のクレームはやむをえないとは思います。
もちろん防止できるものは防止し、日々工夫や心がけで撲滅しなければなりません。
それでも、思わぬところから食らってしまう。そんな話です
今年の春にかけて修理した117クーペ
この修理の際に幾度となくサフェーサーや塗装を焼き付けたわけです。
ところが途中で、外に出していないにも関わらずなぜホイールやタイヤが汚れていくのだろうと不思議に思っていました。
そんなある日、気付いてしまったのです。ホイールの汚れではなくてメッキが浮いていることを。
これは、アルミ蒸着メッキと呼ばれるもので、分かり易く言えば、本来メッキができないような素材に対して、メッキ曹に漬ける事無くメッキができる便利な技法です。
しかし対して、施工方法から熱に弱く、また耐久性に多少の難があり、下地の作り方で仕上がりや耐久性が決まり。塗装メッキなどと揶揄される所以です。
アルミ蒸着メッキは、以前、アルファロメオ155のグリルの枠、そこだけメッキのアレです。あれを商品化しようとして調べたところ、あまりに耐久性が低い為に諦めた過去があったので、よく知っていました。それなのに、今回気づかずやっつけてしまうとは、なんと情けない・・・
今回の場合、塗装を焼き付ける際に、72℃で焼付けする時に、メッキで使ったアルミが溶けてしまい、下地の黒い塗料が見えるようになったと思われます。
僕ら修理業者はお客さんの自動車が何か問題が発生した場合に備えて、自動車管理者賠償保険なる、専用の(自動車)損害保険に加入しています。
今回のように、塗装の際の高温で溶ける程度の耐久性に大いに疑問を持ちつつも、引き受けた元請け、ましてユーザーがこの費用を支払うのもスジではありません。
結局、ウチが泣くことになるのが自然な形かと思い、自管賠を使うことにしました。
ところが。まあ、皆さんもご存知の通り、損保会社は入ってもらいたいときはあれほど愛想を振りまいてお願いされるのに、いざ、何かあった場合はなんとかして払わないようにする理由を見つける、本当にドイヒーな方々です。
今回も高温によって溶けたことには払えませんと突っぱねられてしまいました。
火事で溶けたら払えるんですけどねぇーって言ってました。
ははは、こりゃ一本取られましたな、じゃあ、本当は火事で溶けたんだと言ってももちろん信じてくれませんでした。
ちなみに、今回の台風や地震ような災害にあっても出ませんので、同業者の皆さんは御注意ください。
神戸でフェラーリが水に浸かってしまったのがどうなったか、少々気になりますが、こちらはそんなこんなで、自費で修理を進めて行く運びとなりました。涙
はらはらとムケて剥がれる塗装はサンダーで削ることもできません。
ここはいつもの日本ブラスト加工研究所 さんでサンドブラストを当ててもらい、費用はかかりますが、キレイに研磨と足付けを行ってもらいます。
キレイになって帰ってきたホイール。クロモドラはマグネシウムホイールなので、上から普通には塗装できないので、エッチングプライマーを入れて塗装します。
余談ですが、MPIを作る前は、いすゞの古い乗用車を扱う、いすゞスポーツにいたわけですが、その時代、25年前は今のようにネットもなく、安いアジアン工具もありませんで、サンドブラストキャビネットは高値の華でした。
しかし、弱者にはお外でやりっぱなしの環境破壊行為の、直圧ブラストなる方法がありました。
それはハコの中でやらず、屋外で粉やカスを撒き散らしながら行うものでした。
本来なら大きな部屋の中で、人間が入って作業するものなのですが、それを知らず、大自然の中で、マスクもつけないで行っていました。
すると、夜になんだか咳が長く出るんですよね・・・ 恐ろし
で、ブラストの機械は高いが、タマは安かったのですよ。
サンドビーズは、当時は近くにノリタケカンパニーが扱っていて、近くに狭山営業所があって、簡単に買うことができました。ノリタケカンパニーとは、国産高級陶磁器、食器を作るメーカーで有名ですね。
もちろん粗さはサンドペーパーと同じく番手で決まっています。当時は確か、180番と80番を使っていたと思います。
面白いように取れるので、最も目が粗いのは何番ですか?と聞いたら「確か5番とか7番がある」と教えてくれて、80番であれほどすごい研磨力を持つのだから5番とかなら、とんでもない掘削力が期待できるに違いないと注文したら
ちょっと小さなピーナッツのようなヤツがやって来ました・・・・
印象としては、今で言うストライクイーグルのハニーローストピーナッツの小さいのみたいなやつです。
ブラストすると、ガンにも振動が伝わりペッペッとピーナッツを出しているが分かります。
しかし、その部品に当たって跳ね返ってくるピーナッツの痛いこと。それも粒がでか過ぎて大して塗装もはがれず、がっかりした思い出があります。
さてだいぶ脱線しましたが、今回のアルミ蒸着メッキは神村メッキさんでお願いすることになりました。
ここのホームページは実に分かり易く作ってあって、対応も丁寧です。
このHPにあるとおり、下地までがっちり仕上げれば、先方にも負担がかからず、こちらも費用が圧縮できてウインウインです。
それで出来ることは自分で、と言うことになったのです。
こんな感じで黒を塗って、つるんとした下地を作れれば、メッキはキレイに仕上がりそうです。
がっちり下から、スタンドックスのシステムで仕上げているので、剥離などの心配もなく実に信頼できる状態です。これでメッキ屋さんに送ります。
待つこと2週間。美しいホイールとなって帰ってきました。
もうこれで、心配なしです。次からは気をつけて作業しよう。
多額の費用がかかって泣きそうでしたが、仕上がりを見れば涙くんさようなら